個体識別番号と子牛登記
昨日、ハンバーグを作るために、こやま牧場の牛肉を50キロ仕入れました。
こやま牧場の牛肉は枝肉で一頭買いしている食肉加・販売をしている業者さんから仕入れたのですが、その時に子牛登記ももらいました。
子牛登記ではいろんなことがわかります。
- 子牛の時の鼻紋
- 牛の個体識別番号
- 繁殖者の情報
- 肥育農家の情報
- 生年月日
- 受精年月日
- 受精者氏名
- 検査年月日
- 父牛、母牛の名前(2頭)
- 祖父牛、祖母牛の名前(4頭)
- 曾祖父の名前(4頭)
などです。
本当に、和牛っていろんな情報を管理されてるんですね~。
ところで、父母はもとより、曾祖父の4頭の名前までわかるというのはなぜかというと、牛の性質は遺伝によるところが大きく、血統が重視されるからです。
牛の血統は、競馬のサラブレット並みに厳重に管理されているのです。
何故なら、牛肉の『質』は血統で決まるからです。
皆さんの中で、曾祖父の名前を4人言える人がいるでしょうか?
4人とも言えるという人は、よほどの名家ですよね…。
ちなみに私は、曾祖父4人のうち、答えられるのは1名だけです。
もちろん、牛と人間では生きる長さが違うので、比べようもないのですが…
今回肉を買った牛牝の『まさるさち』は
- 父牛が福久幸
- 母牛がてるしげまさる
- 祖父の牛が安福久(父方)、美津照茂(母方)
- 祖母の牛がゆきこ(父方)、ひらしげまさる(母方)
- 曾祖父は安福165の9、金幸、美津照、平茂晴
であることがわかります。
こんな感じで、和牛は血統の情報がしっかりと管理されていて、
肉を買うとその情報がついてきます。
なぜ「ブランド和牛」があるのか
三大和牛と言われる神戸牛、松阪牛、近江牛などブランド和牛があるのは、DNAを引き継ぐ血統を守る、という概念が日本の和牛肥育農家にはあるからです。
壱岐牛も当然血統を守るという意識は強くあります。
和牛の肉質の良さが保たれ、継続して肥育されているいちばんの要因は、
血統が守られているからです。
和牛は遺伝的能力というのががあります。
遺伝的な能力によって
●枝肉重量
●ロースの芯面積
●バラの厚さ
●皮下脂肪の厚さ
●歩留まり
●BMS(脂肪交雑)
などが決まります。
どれも、枝肉の価格に関係するので、
肥育農家は今まで出荷した経験から、
良い評価をされる枝肉になった血統の子牛をセリで買うようになります。
毎回、子牛のセリでは、血統を見て、
どの子牛を育てたらよい枝肉になる成牛になるのか、
必死で見極めようとしています。
血統の見極めは肥育農家にとってとても大切で、経験と知識が必要です。
スーパー種牛として記念碑が建つ。
今回買った枝肉の子牛登記にのっている曾祖父の牛、『平茂晴』は2017年12月に亡くなったのですが、
長崎県肉用牛改良センター入口に 『「平茂晴」号 顕彰の碑』という記念碑が建てられるほどのエリート種牛でした。
2013年に長崎県佐世保市で開催された全国和牛能力共進会で、肉質日本一の原動力となり、全国的に高い評価を受け、長崎和牛振興に貢献したという功績が称えられたのです。
平茂晴号は、日本一の血統を持った種雄牛として、長崎県内に多くの優秀な牛を生産しました。
平茂晴の冷凍精液譲渡本数は累計約22万1000本。
本県歴代種雄牛の中で最も多く利用され、10万頭以上の子牛が生まれ、約8000頭の雌牛が繁殖牛として県内に保留されました。
このように、優秀な種牛は、一頭で何頭もの子孫を作ることもあるのです。
血統を守り、和牛の品質を守り抜く
和牛の品質は、血統を守る事が大切です。
そのために各県の畜産研究所や改良センターの人たちや 生産者が、 和牛の肉質、味わい、生産性の向上を求め、日々改良に取り組んでいます。
子牛の値段が高くなったり、育てるのに手間がかかったり大変なこともありますが、畜産の仕事にたずさわる多くの人が品質を守ろうとして一生懸命努力しているからこそ、和牛は美味しいのです。