畜産農家の悩み~子牛が高い
「子牛が高っかね~~(高いね~~)」
肥育農家が顔を合わせると、よく話題に上る和牛の子牛の値段の話。
10年前の2008年平均で約35万円程度だった和牛の子牛は、今では1頭70万〜80万円とも言われています 。
血統がいい子牛だと、100万を優に超えることも…。
黒毛和牛の子牛の値段はここ10年で約2倍に膨れ上がっています。
子牛の値段が上がった理由
少子化は人間だけに限った話ではなく、牛も少子化と言えるかもしれません。
その理由は、第一に繁殖農家の数が減ってしまったこと。
母牛に種付けして子牛を産ませ、育てて、ある程度まで育ったら肥育農家にバトンタッチするという仕事が繁殖農家です。
繁殖農家の数が減ってしまったのには理由があります。
まず、繁殖農家の高齢化。
後継者がいなくてやめてしまった小さな牧場の話をよく聞きます。
さらには、血統の良い種牛の『精子』値段はとても高く、種付けしても必ず成功するとは限らないので、ギャンブル性が高いこと。
そして、出荷するまで育ててもコストが合わないということ。
24時間体制の重労働であることも若者の畜産離れの原因でもあります。
和牛の子牛を肥育する繁殖農家は、約7万戸から約4万戸に激減してしまいました。
肥育農家の数も減っています。
子牛を買って、成牛になるまで育て、出荷するのが肥育農家の仕事です。
肥育農家も2008年には約8万戸あった肥育農家は、2017年には約5万戸と3割以上減少しています。
10年で2倍の値段まで高騰してしまった子牛。
高い値段で子牛を買っても、出荷時の値段は2倍というわけにもいかず、
手間暇かけて育てても割に合わないと判断した肥育農家が多いというのが理由だと思います。
一戸当たりの農家が肥育している頭数は10年で4倍に。
でも、 肥育農家の数は3割減なのですが、出荷頭数は、1割ほどしか減っていないのです。
これは、1戸当たりの農家で育てられている和牛の頭数が増えているのからです。
下記の表は農林水産省の「家畜統計」。
平成30(2018)年2月1日現在の統計のグラフです。
グラフの左(←)は飼養農家戸数
グラフの右(→)は和牛の頭数
このグラフは、肉用牛飼養農家戸数なので、和牛に限ったグラフではないのですが、
肉用牛の飼養頭数は2,514千頭と、平成3(1991)年比で10パーセントしか減少していませんが、
飼養農家数は48,300戸と、平成3年比で78%も減少しています!
でも、農家一戸当たりの飼養頭数は52.0頭と平成3年比で4.1倍と規模を拡大しています。
畜産農家の数はすごく少なくなってしまったのに、牛肉の生産量があまり落ちていないのは、飼養農家の一戸当たりの頭数が4倍にもなったからなんです。
以前は、畑や田んぼをやりながら少ない数の牛を繁殖または肥育もするという、家族経営の農家やサラリーマンをしながらの兼業農家が多かったのですが、
経営規模を大きくした専業の畜産農家が増えているとことが推測されます。
「牛は、手間かかるし、あんまりもうからんけんもう辞めた~。」
という話をよく聞きます。
特に、母牛を数等飼っているだけという小さな牧場の数は、ここ何年かで本当に少なくなってしまいました。
その一方で、2017年には、大型量販店チェーンのイオンが、
和牛の繁殖事業に参入し、鹿児島の繁殖農家の事業を継承しました。
40頭の母牛を抱え、2020年までに繁殖から肥育まで手がけた和牛を年500頭肥育するという話です。
和牛市場でも二極化が進む
小さい農家は姿を消し、大手が参入してくるという二極化の波は畜産農家にも言えます。
でも、壱岐牛には壱岐牛の魅力があり、他のブランド牛もそれぞれに特徴と魅力があります。
それぞれの地方のブランド牛の魅力を切磋琢磨し磨き上げてきた歴史は、そのまま、和牛の質の向上の歴史とリンクしていて、和牛の品質は10年前と比べ格段に良くなってきています。
壱岐牛も、壱岐牛出荷組合と壱岐市農協とタッグを組んで、安定供給と品質向上を目指し、日々精進を重ねています。
壱岐牛の歴史や肉質の魅力、口に入れた瞬間の味の美味しさ。
味の美味しさには本当に自信があります。
グローバル化とか、
少子化とか、
子牛の高騰、
それに伴う和牛の価格高騰とか、
大手の参入とか、
いろいろな意味でのターニングポイントとも言える、今の世代の肥育農家が
壱岐牛を次世代に繋げる役割をしっかり自覚して、壱岐牛を定期定量出荷することを続けていけば、
皆さんに食べてもらえる機会も増えるし、ひと口食べて頂ければ
壱岐牛の魅力が伝わると言うことを信じています。