牛の胃袋【ミノ・ハチノス・センマイ・ギアラ】

牛の4つの胃袋の働きについて

前回の記事で、牛は反芻胃という胃袋の仕組みを持っていて、胃袋が4つあるというお話をしました。今回は、その4つある胃袋を一つ一つ見ていきます。

前回の記事はこちら↓↓
牛肉の部位【牛の胃袋は4つ】

牛の胃袋の図。第一胃から第四胃まであります。
牛の四つの胃について
牛の四つの胃の拡大図。それぞれ焼肉などで食べられます。

牛の第一胃(ルーメン)【ミノ】

牛の胃袋の中で一番大きな胃袋が第一胃です。

150ℓから200ℓも内容量があります!!
すごく大きいですね。

第一胃は草と水を混ぜ合わせ、胃袋の中でも貯蔵庫の様な働きもします。

第一胃はルーメンともいわれ、ルーメンにはバクテリアや原生動物(げんせいどうぶつ)が寄生していて、
これらの微生物は、牛が食べた草の食物繊維を分解する役目をしています。

つまり、 ルーメンは自分自身の消化器官では消化することの出来ない繊維成分を、微生物の力を借りて消化するための器官です。

牛が、すごく消化に悪い牧草を食べても消化して、そこから栄養を吸収することが出来るのは、第一胃の中に微生物がいるからです。

第一胃に住んでいる微生物は、牛の食べた牧草を分解して、 グルコース、糖類に分解されます。


牛の第一胃の部分は焼肉ではミノと呼ばれています。
コリコリの食感がすごく美味しいところです。

肉厚で固いので食べやすいように包丁を入れてあることが多いです。

コリコリの食感が美味しい「ミノ」は牛の第一胃

第二胃【ハチノス】

その名の通り、『ハチノス』に似ています。

牛は、食べたものをいったん胃の中に入れ(第一胃)、そこで微生物により分解させ、それを反芻と言って、口に吐き戻してもう一度、モグモグと噛み下してさらに消化しやすい状態にして、第三胃に送ります。

牛の第二胃であるハチノスは、牛が食べて第一胃で微生物に分解させた草を、
また牛の口内まで押し戻す役割があります。


牛の第二胃はハチノスと呼ばれ焼肉などで食べられます。
ハチノスは焼肉だけでなくスープや煮込み料理などにも利用されます。

下処理前のハチノスは黒く、皮をきれいに取って真っ白にしてから食べます。

弾力があって、さっぱりとした風味が人気です。

牛の第二胃ハチノス。その名の通りハチノスに似ています。

牛の第三胃【センマイ】

第三胃のセンマイには、第二胃のハチノスから通ってきたものを選別し、
牛の第四胃に入る量を調整する役割があります。

まだ噛み下しが足りない、大きな繊維が残ったものを第二胃に戻し、しっかりと小さく分解されたものを第四胃に送ります。

また、栄養分や水分を吸収する役割もあります。


センマイは『千枚』が由来ともいわれていますが、胃壁がヒダの様に幾重にも重なりあって、そのひだの間から栄養を吸収します。

焼肉でもセンマイは食べられます。
コリコリした歯ごたえとザラザラした舌ざわりが特徴です。センマイそのものには味はそんなにありませんが、酢味噌やタレなどでさっぱりと食べることが多いです。

牛は第三胃のセンマイで栄養を吸収します。

第四胃【ギアラ】

第四胃は人間の胃に相当します。
ここで初めて胃液の分泌があり、人間の消化器官の様な役割があります。

第四胃はここまで運ばれてきたものを消化しますが、 ここまで来るのにずいぶん手間暇がかかっていますね。

牧草はとても消化が悪いので、第四胃に来るまでに様々な段階を経ないと消化できないのです。

第四胃で初めて人間と同じように胃液を分泌して普通の消化活動が行われますが 生物学上的に『胃』の役割を果たしているのはこの第四胃のみで、
他の三つの胃は『食道』が、消化の悪い草の食物繊維を消化するために進化したものです。

第四胃はギアラや赤センマイと呼ばれ、焼肉でも食べられます。

ギアラは四つの胃の中で最も濃厚な味が楽しめます。脂ものっているため、ホルモンのなかでも肉に近い食べ応えがあります。

ギアラは焼肉でも食べられます。濃厚な味です。

牛は内臓もとても美味しいです

牛の消化器官は、あの大きな牛の体を作る栄養を、消化に悪い草を食べて維持するために、独自の進化を遂げてきました。

だから、牛はとてもたくさん食べます。
時間も長い時間食べてます。

起きてる時間の大半をエサを食べているか、食べたエサを吐き戻して反芻しているか、どちらかという感じです。


肥育農家は子牛に肉をつけて大きくするのが仕事ですが、ただ太らせればいいというわけではなくて、
皮下脂肪のような余分なぜい肉を沢山つけている牛は、市場価値が低いので、余分な脂肪を付けないようにも気を付けています。

霜降りのいい肉を作るために、どんな飼料給与をすればよいのかを研究したり、牛の食べ方や体の成長ぐあいに合わせて、与えるエサを工夫して、いろいろと試行錯誤を繰り返しています。

そして、出荷前にはちょっと不健康というぐらいに太らせるという事が行われています。

それが、霜降りの肉質の美味しい肉になる秘訣で、
牛の肉質をより良いものにするために、試行錯誤を繰り返すのが肥育農家の仕事です。

そんな風に、牛の肉の質をより良くするために試行錯誤して育てていますが、

牛は、肉だけじゃなくて、内臓も、捨てるところがないぐらい、いろんな部位を食べれる本当にありがたい動物です。

見た目がちょっと…とか、食わず嫌いな人もいると思いますが、
牛は内臓も本当に美味しいので、食べたことが無い方は是非食べてみてくださいね。

牛は胃袋も腸もすてるところがなく、美味しく食べれます。
牛の四つの胃