福岡市食肉市場を見学してきました。

市場で枝肉になるまでを見学してきました。

こやま牧場は、毎週福岡の食肉市場に牛を出荷をしています。
壱岐牛の取引は毎週月曜日に行われていて、自分のところの牛がどのような評価がなされるのか、出荷した牛がセリ落とされるところまで確認しています。

自分が出荷した牛を最後まで見届けるのも、生産者の責任だと思っています。

こやま牧場は年間、約120頭の壱岐牛を出荷しているので、だいたい毎週2頭は出荷しています。(3頭出荷する時もあります)

今回は、ブログの記事を書くにあたって、食肉市場の見学を申し込んで、牛がと畜された後、どのように解体され、枝肉になるのか、食肉市場の見学に行って来ました。

食肉市場の全国マップ
食肉市場で貰ったチラシ。全国にはたくさんの食肉卸売市場があります。

食肉の卸売り市場は、全国にもたくさんあります。

中央市場が10か所
指定市場(地方市場)が18か所
これらは、卸売市場と言って、セリ取引を中心にした卸売市場です。

この28の市場で、日本全国すべての食肉を扱っているのではなく、
そのほかにも食肉センターは、全国で150か所あり、
全国展開しているような大手スーパーは、独自の流通経路があったりします。

牛肉、豚肉が食卓に届くまで
見学のパンフレットより。食肉が食卓に届くまでの流れがわかります。

平成29年度で日本で流通した食肉は607万トン、
内訳は
1位は豚肉で260万トン
2位は鶏肉、ブロイラーで210万トン
3位が牛肉で128万トン
後の4位以下は、馬や羊などです。

輸入の肉がこのうち6割を占め、
国内産は174万トンです。

図にするとこんな感じです↓↓

図にするとこのような割合です

上記は全国の食肉流通量で
福岡の食肉市場では、このうち毎年約2万トンを扱っています。

内訳の頭数で言うと
牛が2300頭
豚が124000頭
を1年間で扱っています。

1日で言うと
牛が90頭
豚が500頭
です。

牛は1時間で30頭のペースで解体していきます。

福岡の食肉市場は、とても衛生的で綺麗な施設です。
見学者を受け入れているのも全国でも珍しいことで、
ISO9001に基づいて、徹底した衛生管理のもとで解体が行われています。


市場内には、いろいろな関係団体も入っていて、だいたい200名ぐらいの人が働いているそうです。

福岡食肉市場の外観。 福岡市東区東浜にあります。

見学が出来るようにガラス張りになっているのも、見せれるぐらい綺麗で衛生的な環境で食肉加工をしているということだと思います。

牛の検査も1頭ごとにされます。
脊髄も抜かれ、1頭づつBSEの検査に出されます。

徹底した衛生管理で、
例えば牛の皮をはぐ作業をしている人は、1頭皮をはぐたびに、熱湯で刃物の消毒をして次の牛の皮をはいでいるそうです。

コチラがパンフレットのフロアマップ。クリックで拡大できます。

見学は食肉加工の現場の中には入れませんが、見学者用のガラス張りの通路があって、中でどのような加工がされているのかつぶさに見ることが出来ます。

見学は、と畜された後の、解体室(ダーティーゾーン)からの見学になります。

と畜された牛はフックに足から吊り下げられ、レーンにのって解体室に流れてきます。

解体室は牛の皮をはいだり、内臓を出したりするダーティーゾーンから始まり、
皮をはいだ後、頭を落としたり、内臓を綺麗に取りだして、半分に切るまでのクリーンゾーンまで、フックで吊り下げられた状態のまま流れていきます。

見学していても、ガラス越しなので匂いなどはしますが、衛生的な施設の中、システマチックな分業作業で、牛を次々に解体していく様子を見ることが出来ます。


レーンにのってダーティーゾーンからクリーンゾーンまで流れていく牛の姿を見ていると、初めは生きてる姿が想像できる『牛』から、だんだん食品としての『牛肉』の姿に変化していくのがよくわかります。

ダーティーゾーンからクリーンゾーン へと、部屋が変わったときの牛の姿の変化は驚く程で、見学者通路に漂う匂いも、全然違います。
(皮がついている状態の時は、獣のにおいが通路まで漂って来ます。)

食肉市場の仕事説明図
食肉市場の説明図。(パンフレットより)

もちろん、牛のと畜や解体が残酷だという人が居るかもしれないですが、人間は食物を食べなくては生きていけない生きものです。

もし、菜食主義者で肉は食べないという人が居たとしても、その人の先祖は、何らかの動物を食べて、あなたにその生命を繋いできたわけですので、今生きていられるのは、紛れもなく犠牲になってくれた動物のおかげです。


確かに、牛をと畜するのは残酷な事です。
と畜するまで育てている肥育農家としては、牛に対しての罪悪感もひとしおです。

ですが、畜産農家や、食肉市場で働く人がいなくては、私たちは牛を食べることが出来ません。

残酷だと目を背けるのではなく、安心して牛肉が食べれるように、牛をと畜、解体し、それに関わる多くの人の働きがあるということを知り、その働きに感謝することが大切だと今回見学をして感じました。

と畜はどんなに衛生的な環境であるとはいえ、やはり、携わっている人は大変な仕事だと思います。

匂いもしますし、血も出ます。
年間で2300頭。毎日90頭の牛の頭を切断する仕事や、牛の身体を真っ二つに切断する仕事や、内臓を取り出す仕事や、と畜する仕事。

熟練を要するので、受け持つ仕事は一度その仕事を受け持つと、毎日ほとんど変更はなく、 ずっとその仕事らしいです。


1時間に30頭のペースで牛が解体されるということですが、
どこかの部位の担当の人が遅れると『ブーブーブーブーブーブー』
とブザーの音がします。

一つの担当箇所で手こずったためにレーンの流れを止めてしまうと、ほかの人にも迷惑がかかることになります。

自分の仕事の遅れで、他の部位の仕事している人に迷惑が掛からないように、
時間に急き立てられるように、急いで仕事することになります。

本当に大変な仕事です。

枝肉が吊り下げられている様子
こちらが、解体を終え、下見室に吊り下げられた枝肉

今回、牛の解体の現場を見学して改めて、多くの人の働きによって、食卓に肉が並んでいるということを感じました。

バランスが取れた食事をとるためにも、肉のたんぱく質は人間にとってとても大切なものです。
そして、それは、食べた人の血となり肉となって、生きるエネルギーを生み出してくれます。
人間の身体は食べたものからつくられます。


天地(あめつち)の恵みと、
多くの人々の働きに感謝して、
いのちのもとを慎んでいただきます 。

「いただきます」「ごちそうさま」という気持ちを大切にしようと改めて感じる、見学ツアーでした。

施設内に獣魂供養塔があり、食肉市場で働いている皆さんも、命を扱う仕事だということを自覚し、責任を持って仕事をされています。

獣魂供養塔
食肉市場には施設内に獣魂供養塔があり、年に一度供養祭が行われているということです。

福岡の食肉市場はオープンに見学ができる、日本でも数少ない施設です。
子どもから大人まで、予約をすればどなたでも見学することが出来ます。

獣魂供養塔の石碑の文字からもわかりますが、牛にも豚にも『魂』があって、それを奪う事は罪悪感を感じます。
さっきまで生きていた牛を、フックでつり下げ、皮をはぎ、頭を落とし、という生々しい現場を見ると、その残酷さを痛切に感じます。

だからこそ、大切に食べ物を頂きたいという気持ちになると思います。

子供でも見学には参加できますので、食育にとてもいいと思います。
福岡食肉市場のサイトはこちら